ニジのコンキマスタ

ふとニジマスは生で食べられるのか疑問に思った。

今でこそ寿司ネタの王者として君臨しているサーモンだが、伝統的な寿司には存在していなかった。加熱しないまま摂取した場合、悪名高い寄生虫アニサキスを媒介する恐れがあるからだ。唯一、例外としてアイヌ民族が氷漬けにした生鮭「ルイベ」を食していたことは有名だが、焼き鮭に慣れ親しんだ日本人からすればンな面倒なこと出来るかヨォといったところだろうか、和人が食べたとか、内地に広めたという記録は聞いたことがない。そんな日本でサーモンの切り身がシャリの上に乗せられるようになったのは80年代になってから、ノルウェー人が輸出用にと考案したものらしい。

 日曜釣り堀ではなじみの深いニジマスだが、よく考えればマスとサケは同じ魚なのではなかったか。ハマチとブリのように、同じ魚でも成長段階によって別の名前で呼ばれるものもあるし、そういう類なんだろうか。

調べてみると、英語ではサケ科のうち海水で生活し産卵期に川に戻ってくるものをサーモン、一生を河川で過ごすものをトラウト(マス)と呼ぶ。一方日本ではサケ科の線引きが長らくアバウトな感じでやっていたため曖昧なまま現在まで至るらしく、我々庶民がふだん口に入れる「トラウトサーモン」はニジマスのことなのだという。

こうなるとニジマスは生食できるどころか、普段から知らずに親しんでいたことになる。「1億人が選んだ!日本人が好きな寿司ネタNo.1!」のサーモン氏と流れるプールを改装した釣り堀でガキンチョにひっかけられる哀れな雑魚とではなんだかえらく印象が違う気がして、今までニジマスを過小評価していたなあと少なからず自省の念にかられる気持ちです。とはいえ完全養殖で寄生虫の心配もないはずの釣り堀ニジマスを刺身で食べる人は見たことがない気がするんですがどうでしょう。