南軍におけるバトルクライ「反逆者のエール」は何が発祥か
鬨の声(バトルクライ)、といえば日本人とロシア人が大好きなものだ。(なぜならどちらも近代戦で向こう見ずな戦い方を経験したから)
ところで世界には洋の東西を問わず、様々な種類の鬨の声がある。いくさの最も重要な局面、相手と相対しいよいよ突撃するという場面で己を奮い立たせるために、人類は様々な言葉を叫び、そして向かっていった。
面白いのは南北戦争で南軍が使用したものだ。南北戦争ものの映画なんかを見てると、南軍兵士がしきりにイイイイイイ!!みたいないかにも悪役然とした金切り声を上げているのをよく見かける。「奴隷制支持者の野蛮な南部の田舎者」を表現する映画的な演出かと長らく思っていたのだが、ところがどうもそうではないらしい。
・「反逆者のエール」
南北戦争中に南軍兵士が好んで金切り声をあげていた。ウサギの悲鳴のように甲高く聴くものをおぞけだたせるそれの起源はネイティブアメリカンだとも、キツネ狩りの際に獲物を誘導する独特の発声法に由来するものともいわれる。
南軍退役軍人のエールを記録したもの。
エールについて決まった文言はないようで、「インディアンと狼の叫び声の中間のようなもの」を出すと説明される。こうした異質な叫び声は対峙する相手を怯えさせる一方で、発している自分たちの恐怖心を和らげる効果もあったという。
南軍の大声は恐怖をコントロールするのを助けることを目的とした。ある兵士が説明したように、「私は突撃するときに叫びたくありませんでした。しかし、初めて銃を発砲したとき、私はできる限り大きな声で叫び、(走り)止まるまですべての息を止めました。」
また、南軍の将軍ジュバル・アンダーソン・アーリーは弾薬が尽きたため突撃をためらった部隊に「敵に向かって叫べ!」と命じた。
由来として正しいかは不明だが、当時から多くの人間がエールをネイティブアメリカンと関連付けていたようだ。実際、南軍のパルチザン部隊であるヴァージニア騎兵第35大隊はその特徴的な叫び声と、おそらく略奪を行うパルチザンという観点から「コマンチェ」(乗馬と略奪で名を馳せたネイティブアメリカンの部族)というあだ名で呼ばれていた。
『ラスト・オブ・モヒカン』で描かれた英軍とネイティブアメリカンの戦闘。
恐ろしい喊声は対峙した相手に相当な心理的プレッシャーを与えるものだったであろう。
一方でキツネ狩りの際に発する独特の叫び声、猟犬の唸り声が発祥だともいわれる。
そっちの参考動画も一応探したんだけどなんか別に、そんなにいい動画ないから別に貼らんどこ…。
ただ甲高い声が動物とのかかわりで生まれたもの、とする概念は的外れでもないように思う。たとえば「反逆者のエール」はしばしばカウボーイが言うような「イーーハーー!」で表現されることもあるのだが、イーハーの起源は猟犬や馬を操る際の命令(イー、が右、ハー、が左)ではないかというニューヨークタイムズの記事を見つけた。
THE WAY WE LIVE NOW: 1-06-02: ON LANGUAGE; Yee-Haw - The New York Times
ちなみにケンタッキー州では同名のバーボンを製造しており、ローリング・ストーンズのキース・リチャーズが熱狂的な愛飲家だったようです。
アマゾンでも買えるので誇り高き南部人はぜひ。