UMAぴょい伝説

私は歴史が好きなオタクだ。

ついでに物心ついた時から未確認生物やら超常現象やらオカルトが大好きだ。(ムーも買ってた)

残念なことに、私が好きなこの二つの要素を足し合わせた(カツカレーのような)ヒストリカルオカルトな歴史的事実・フォークロアやそれを題材にした作品は多くない。古代、中世の歴史に記録された現象のうちどこまでが真か誤か判別が難しく、未確認生物と自然現象の解釈として生まれた妖怪の区別もつかないからだ。ちなみに数少ない歴史上の人物と怪異が関連した稀な例としては德川家康のお膝元に現れた「肉人」と呼ばれる存在が挙げられる。

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グリーザ星人のような肉人の想像図。家康が隠居する駿府城の庭先にどこからともなく迷い込んだため大騒動になったが、神君の塩対応によって放逐されたらしい。後世に記録する価値も疑わしいようなしょうもない逸話だけに、寧ろ真実味を帯びている気がする。(德川家の公式記録では「指の無い乞食がいました」と記載されているらしい)

世界大戦の時代へ突入すると、これまで人知の及ばなかった場所にも兵士たちが進駐し、極めて現実的な理由から陣取りゲームを始めるに至ったわけだが、それにしても彼らが現地で怪異に遭遇した、もしくは聞いたであろう怪異の情報のうち、後世に伝わるものはきわめて少ない。これは政治的もしくは心情的な事情が考えられる。当たり前のことだが、洋の東西を問わず戦争を面白半分な怪談の文脈で語ることは不謹慎であり、ましてや戦時下でそんなものを目撃したとしてもンな事ァどうでもいいんだヨ馬鹿野郎と一蹴されてるからだろう。

少ないながら、そうした一蹴を免れ記録に残った話もある。それは「空」に関連する事象だ。第二次大戦中に両陣営によって目撃された奇怪な発光体「フー・ファイターズ」は敵の新型兵器ではないかと危惧されていたため、誰も一笑に付すことができなかったのだ。1942年にはロサンゼルス上空に出現した正体不明の物体を日本軍の襲来と誤認した米軍との間で戦闘が発生、世に言う「ロサンゼルスの戦い」が発生している。そもそも円盤型UFO自体ナチス・ドイツが開発したヴンダーなヴァッフェだとか言いだすともうキリがないので割愛するが、こんな史実が残されているぐらい大戦時の空にまつわる超常現象は充実しているのだ。

ロサンゼルスの戦い - Wikipedia

 

空を除けば陸・海の超常現象については驚くほど残された記録が少ない。とはいえいつの時代も人は怪談を好むもので、特に娯楽の少ない前線兵士の間では幽霊話が盛んに交わされたという記録が残っている。「軍隊と怪談」というジャンルに関して言えば、専門の書籍が発行されているぐらいにはまとめられているようなのでここでは割愛する。それじゃ残ったものは?といえば未確認生物だろう。今回は私が収集できる範囲での軍隊×未確認生物、もしくはそれに準ずる怪現象が登場する話をペタペタした。

 

「青山御所に現れた怪物」

 明治十六年二月二十日、近衛歩兵第一連隊第二大隊第二中隊の歩兵卒・渡辺万弥は、青山御所の守衛のため、午前二時から九の門の歩哨に就いていた。あいにくその日は、ことのほかの暴風雨とあって、渡辺は何となく心寂しく思っていた。そのうち、庭の辺りから、怪しい物音がして、坊主のような怪物が現れた。怪物はかすかな声で、
「哨兵〳〵」
 と、呼んでいるような気がした。渡辺はますます恐ろしくなったが、気を励まして、しかと怪物を見ようとした。しかし、そのときには怪物は姿を消していた。渡辺はうわさに聞く狐狸などの仕業だと思い、再び怪物が現れたときには一発で撃ち取ってやろうと勇気を奮い起こして小銃に弾丸を装填した。そうして、渡辺がびくびくしながら怪物を待ち受けていると、にわかに砲声が起こった。驚いて四方を見ると、いつしか渡辺の体は前に倒れていて、右手の指が撃ち落されていた。渡辺は気が動転していたので、何も覚えていなかった。
 渡辺はその後、禁内で発砲した罪によって軍法会議にかけられ、軽禁固五十日に処された。

参考文献
『開花新聞』(明治十七年四月十二日付) 三益社

 

「黒服の日本兵と白服の日本兵

 柳田国男遠野物語拾遺』にこんな話が載っている。
 日露戦争当時、満州の戦場では不思議なことばかり起こった。
日本兵のうち黒服を着ている者を射てば倒れたが、白服の兵隊はいくら射っても倒れなかった」
 と、ロシア兵の捕虜が言うのである。しかし、土淵村の似田貝福松という人は、
「白服を着た日本兵などはおらぬはずである」
 と、語っている。

参考文献
遠野物語 付・遠野物語拾遺』 柳田国男角川学芸出版

 

まさしく民俗学上の妖怪にカテゴライズされそうな逸話だ。近代西欧技術を急速に取り入れ文明開化と持て囃された明治時代ではあるが、ガス灯の灯は自然の暗闇を照らすに未だ不完全で、人々はなおも妖怪と隣り合わせに生活していたことを伺わせる。

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明治元年に描かれた錦絵だが、夜な夜な庶民の髪を食らう妖怪・髪切りの蛮行現場に近代の象徴たる西洋風の軍服と小銃を担いだ兵士が駆けつけているから面白い。旧来の伝承・解釈と近代とが交差している時代であったことを一目で感じさせる。

……というか、改めて読み直すと最初の話は兵役に嫌気差して指落とした奴が適当に取り繕ったヨタ話なだけなのでは!?って気がしてくる。

ついでに言うと、二番目の話で出てくる「白衣の日本兵は存在しない」というのは正確ではない。明治6年式軍服からは白い夏衣が制定されており、日清戦争等を通して約30年程用いられていた。日露戦争に際してこれが目立たないカーキ色に置き換えられたため、かの戦場に白服の日本兵が存在しなかった。この白軍服、何故か絵画資料やら創作やらでもあまり見かけないんですよね。映像作品でもとんと見かけた記憶がない。やはり明治陸軍の制服と言えば濃紺の印象が強いからだろうか。(余談だが、私が白い夏衣に興味を抱いたのは韓国ドラマ『カクシタル』を偶然視聴した時のことだ。敵役の日本人警官達が真っ白な制服を身に纏っており、これまで明治の官吏といえば黒、紺という認識だった私は視覚的な違和感を覚えた。無論、同作品が詳細な時代考証を行っていたとは思えないが、純白の軍服の有無に興味を抱かせるには十分だった。正確には軍服じゃないんだけど)

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話を戻して、 二番目の逸話のような「戦時に神仏、妖怪、更には狐や狸が化けて日本の味方をしてくれた」という話は明治から昭和に至るまで散見され、当時の信仰の篤さ(あるいは迷信深さ)が垣間見える。妖怪といえば御大、水木しげる氏が戦時下のニューギニアで遭遇した逸話が有名であろう。

当時、ラバウルにて敵軍に襲われた水木は仲間とはぐれて森の中を一人逃げ回っていた。すると、目の前に突然巨大な壁が立ち塞がる。それはコールタールで塗られたような平たい壁で、触ると指が入った。気付けば右も左も同じような壁に囲まれており、どうすることもできなくなった水木は、そのうち疲労から眠ってしまった。しばらくして目を覚ました時には、それらの壁が最初から存在しなかったかのように消えていた。そして、その壁が立ち塞がらずに進んでいたら、断崖絶壁で命はなかったことが判明し、水木は目に見えない何かに救われたのだと実感したと言う。水木は帰国してから文献を読んで、あの時に遭遇したのが妖怪「ぬりかべ」だった事を確信した。

ぬりかべ (ぬりかべ)とは【ピクシブ百科事典】

氏はこの他にもニューギニアの地で様々な怪異に遭遇されたと聞く。極限状態におかれた人間が生み出したものか、はたまたかの地で脈々と受けつかれてきた精霊の仕業なのか。

大戦中に日本軍が勢力を広げた東南アジアはUMA情報が豊富な地域でもあるのだが、占領下の将兵たちは不思議なものを見たり聞いたりしなかったんですかねぇ(怪談話はたくさんあったようだが)。次に紹介するのは数少ないUMAな感じの逸話。

 
「竜のような生物」

 大東亜戦争中のこと、タイのある町で、竜のような生物の存在が確認される。
 日本軍は当時、俘虜を使役して橋を作らせていたが、その日の作業が終わると、俘虜を洞窟内に収容していた。
 しかし、次の日になると、一、二名の俘虜が失踪してしまう。これが毎日続くから、たまらない。
 そこで、日本軍は、洞窟の内部に別の出入口があるのではないか、などと考えて、洞窟の調査をおこなうことにした。
 しかし、調査に当たった日本兵はびっくり、洞窟内で、竜のような生物と鉢合わせする。どうやら、行方不明になった俘虜は、この謎の化け物に食われてしまったらしい。
 泡を食った日本兵は、この竜のような生物に手榴弾を投げつけて、退治する。
 うわさによると、この竜のような生物の頭部は、この町ではなく、隣町が保存したそうである。
 また、昭和五十年頃に、この地方を走っている汽車に乗り合わせた客が、大型の爬虫類が丘の頂きにいるところを目撃しているという。

参考文献
『幻の動物たち』(上巻) ジャン・ジャック・バルロワ 著 ベカエール直美 訳/早川書房

別のサイトでは大型のトカゲであろう、とも紹介されていた。確かにコモドオオトカゲならば人も食いそうなものだが…。

今回日本軍にまつわる話ばかり集めたのは、何を隠そう外国語文献を調べることが億劫だからである。というかそんな話でもあれば有名になってそうなもんだけど、ヨーロッパ人の考える戦争オカルトは神秘主義的なナチ高官の悪魔崇拝とか不死身のドイツ軍ゾンビとかそんなんばっかだから始末が悪い。怪鳥コンガマトーと戦うドイツ領東アフリカ部隊とか、前人未到の髑髏島に上陸した海兵隊員が禁断の遺跡を発見し……とか、極寒のロシアの森林地帯で夜な夜な現れ兵士をさらう悪霊イタクァとか……。そんなのが見たいんだよぉ!(五十歩百歩)

数少ないむこう発のわくわく話としてはこんなのもある。

 

(CNN) 第1次世界大戦中に海上で謎の怪物に遭遇して撃沈されたと伝えられるドイツの潜水艦Uボートの可能性のある残骸が、英スコットランド沖の海底で発見されたことが20日までに分かった。

残骸はスコットランドの電力会社が電力ケーブル敷設のために海底を調査していて発見。音波探査の結果、100年前に沈んだ艦体がほぼそのままの形で残っていることが分かった。専門家はこの艦体について、怪物に撃沈されたという伝説のある「UB-85」かもしれないと話している。

同艦の艦長の証言として伝わる話によれば、UB-85が海上を航行していたところ、「奇妙な怪物」が水中から現れた。怪物は「巨大な目ととがった頭」を持ち、「月明りでも歯が光るのが見えた」とされる。

怪物のあまりの巨大さのために艦体が傾き、乗員は怪物を銃撃していったんは海に沈めたが、この間に甲板の覆いが損傷して潜水能力を失ったという。

CNN.co.jp : 「海の怪物」に撃沈されたUボートか、英国沖で発見 - (1/2)

 

おまけ

戦記漫画の巨匠・滝沢聖峰氏は日本軍×超常現象ものというニッチすぎる題材を扱った稀有な漫画『WHO FIGHTER』を描いている。面白いので是非。

 

 

引用元サイト